2025年4月の西宮市100周年を期に新たに収蔵した勝部如春斎、金山平三、
辻愛造、秦森康屯の作品と東ドイツで製作されたポスターを、関連の館蔵品とともに紹介します。同時開催として、現代木版画の第一人者として国内外で高く評価され、京都を拠点に活躍した黒崎彰(1937〜2019)の小企画と、近代日本画コレクションのテーマ展示を行います。
新収蔵作品概要
【1】江戸時代に活躍した西宮出身の絵師・勝部如春斎の作品がさらに加わりました
勝部如春斎(かつべ・じょしゅんさい 1721〜1784)は西宮出身の狩野派の絵師として唯一、後世に名を残しました。当館では2017年の回顧展開催、2022年の開館50周年を記念した作品購入、2023年の「画人たちの仏教絵画」展などを通して、如春斎の顕彰に努めてきました。このたびは西宮市100周年の節目の年を記念して寄贈を受けた作品4点を初公開するとともに、開館50周年記念で館蔵品に加わった六曲一双屏風と、関連の日本画を展示します。
【2】神戸出身の洋画家・金山平三の作品が初めて収蔵されました
金山平三(かなやま・へいぞう 1883〜1964)は神戸の出身で、風景画や静物画、芝居絵などを数多く描き日本の近代洋画壇に大きな足跡を残した画家の一人です。当館では、1983年に阪神間ゆかりの画家を紹介する展覧会として金山の芝居絵展を開催しましたが、これまで作品を収蔵する機会がありませんでした。このたび受贈した6点の作品は、金山の地元、神戸花隈で事業を営んでいた支援者が長らく所蔵していたものです。本展では金山に師事した大森啓助と、交流のあった満谷國四郎の作品とともに紹介します。
【3】「東ドイツのポスター」が新たに収蔵されました
このたび収蔵した157点の東ドイツのポスターは、1989年の秋に東ドイツ建国40周年を記念して同国から神戸の友好団体に届けられたものです。神戸で公開された直後の1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊、翌年に東西ドイツが統一したことで、ポスターは日本に残され、映画祭の出品を機に東ドイツとゆかりのあった映画プロデューサー鵜久森典妙(うくもり・のりたへ 1948〜2021)氏の手に渡りました。長らく未公開のまま保管されていましたが、2023年に神戸市兵庫区にある「いちばぎゃらりぃ侑香」で公開されたことを契機に、グラフィックデザインを収集の対象としている当館へ寄贈されました。本展では収蔵したポスターの中からその一部を紹介します。
*157点のポスターの全貌は機会を改めて展示する予定です
【4】西宮ゆかりの洋画家・辻愛造と秦森康屯の新収蔵作品・資料を関連の館蔵品とともに紹介します
辻愛造(つじ・あいぞう 1895〜1964)は2024年、秦森康屯(はたもり・こうとん 1923〜1994)は2023年に当館で回顧展を開催したのをきっかけに、作品と資料を収蔵しました。
同時開催
(1)館蔵作家研究 木版画家・黒崎彰
京都を拠点に現代木版画の第一人者として活躍し、国内外の版画コンクールで高く評価された黒崎彰(くろさき・あきら 1937〜2019)は、幕末浮世絵の強烈な色彩に影響を受け、伝統の木版画技法を基に赤と黒を主体とした鮮烈な表現で知られています。
幼少期を神戸で過ごし、芦屋にあった新制作神戸研究所で油彩画の手ほどきを受けるなど、阪神間にもゆかりのある作家です。当館では1978年度に《渇いた夢》を所蔵、以後数度にわたり作品収蔵の機会を得て、現在では14点の作品を所蔵しています。
このたびは「館蔵作家研究」と題して、所蔵品全点を展示して初期から晩年に至る制作の変遷を辿るとともに、版木や道具類など関連の資料を紹介することで、黒崎彰が手掛けた多色刷り木版画の魅力に迫ります。
(2)近代日本画コレクション「東京・京都 二大画壇」
年始恒例のコレクションによる日本画のテーマ展示。今回は「東京・京都 二大画壇」と題して、東京を拠点に活躍した横山大観(よこやま・たいかん 1868〜1958)、京都を拠点に活躍した竹内栖鳳(たけうち・せいほう 1864〜1942)をはじめ、同時代に活躍した画家たちの作品約20点を紹介します。
・出品予定作家
【東京】横山大観、菱田春草、川合玉堂、杉山寧、前田青邨、伊東深水、寺島紫明
【京都】竹内栖鳳、山元春挙、冨田溪仙、橋本関雪、西村五雲、濱田観、山下摩起、上村松園
- 主 催
- 公益財団法人 西宮市大谷記念美術館
- 後 援
- 西宮市、西宮市教育委員会